フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』によせて
吉水法子
めまぐるしく展開する時間の変化に追われて筋を追うのが精一杯。読み終わったものの最後までその世界に馴染めず、おぼろげな絵のイメージは掴んだのもののなんだかモヤモヤ・・
不思議なことですが、二度目に読んだときはトムが月の光に浮かぶイチイ木の枝をかきわけるように、お話の中にどんどん入り込んでいきました。そこには少女時代も、成長しても魅力的なハティがいつも待っていたような気がします。
「かわらないものなんて、なにひとつないものね。わたしたちの思い出のほかには。」
翻訳者であり、小説家でもある高杉一郎さんはエスペランティストであり、シベリア抑留体験記『極光のかげに』などの著書があります。ロシア語の翻訳もされています。翻訳者にも興味が生じるのは大人になって読みなおす面白みのひとつではないでしょうか。