フランシス・E・H・バーネット「秘密の花園」によせて
吉水法子
少女時代に読んだ本を大人になって読み直すと、お話だけを追って心ときめかせていた頃よりちょっと深読みしている自分に気がつきます。
愛することも愛されることも知らずに育った、あまのじゃくで傲慢なメアリが見つけた〝鍵〟。いつか厄介で小さなお嬢様が遠い海を渡って扉を開けてくれる時を待っていたコマドリが、そっと鍵のありかをつついて教えます。
彼女がその〝鍵〟で扉を開いたのは荒れ果てた庭だけではなく彼女自身の心。それは同じように愛を知らない孤独な少年コリンの心の扉を開けるのですが・・。
〝鍵〟は愛でもあるし、勇気、光ともとれます。荒れ果てた〝庭〟は孤独でもあり、絶望。そして古い価値観であるかもしれません。放っておくと大変なことに! 扉を開ける〝鍵〟は持っていますか?