大きな木の家を建てました!

片山ふえ

お待たせいたしました。
皆さまとご一緒に「大きな木の家」の扉を開けたいと思います。

まずは、この「ふえと大きな木の家」というネーミングにこめた想いを聞いてくださいますか。

25年間、101回にわたって私が発行してきた紙の冊子は「We Love 遊」という名前でした。遊び心をそそる「遊」の字があったからです。この字を書いたのは、ワーリャという当時15歳のロシアの少女。お茶目で元気いっぱいだったワーリャの「遊」は、見ていると思わず身体が動き出すような、そんな愉しさにあふれていました。

電子版にするにあたって、「We Love 遊」とネットで検索してみました。すると「遊」も「Love」も星の数ほど、いえいえもっと、あるじゃありませんか! でも、それは何の不思議もありませんね。
そこで、考えました。
何にしよう??
ネット上で存在感を示すには、どうやらカッコいい漢字一字、というのも不向きなようでした。

いい考えが浮かばないままぼんやり部屋を見回して、思わず跳びあがりそうになりました。壁にはジョージア映画祭の主宰者はらだたけひでさんが作られたポスターがはってあるのですが、そこに静かに座しているピロスマニの姿が目に入ったからです。
「私が作りたいのは、ピロスマニが夢みたような場所!」

ピロスマニ。
私にとっては魔法の言葉のような名前です。この名前が出たとたん、パァッと顔を輝かせる人にどれだけ会ったことでしょう。ピロスマニがきっかけとなってジョージアという国に興味を持った人も少なくないと思います。
でも、一般的な知名度はそれほど高いとは言えないので、ここにリンクを貼っておきます。
こういうことができるのが、電子雑誌の利点ですね。
https://x.gd/RFqF9

私が初めてこの放浪画家のことを知ったのは、ゲオルギ・シェンゲラヤ監督の映画『ピロスマニ』(1969)をテレビで観たときでした。そのときに身体中で感じた清々しさは、今でもはっきり覚えています。不器用に、でも真剣に、生きとし生きるものを心の底から愛しながら描き続けたピロスマニ。ピロスマニの絵の清々しさがそのまま伝わってくるような、静謐で美しい映画でした。

https://x.gd/M56kh

その映画の中にも出てくる、ピロスマニのよく知られた言葉があります。
彼が画壇に認められたかに見えた頃のころ、ジョージア芸術協会の集まりに呼ばれた彼は、どうでもいい討議に時を過ごす人々に向かって、こう言いました。
「皆さん、みんなが集まりやすい場所に大きな木の家を建てようではありませんか。大きな家を建て集まって、大きなサモワールからお茶を飲みながら、芸術の話をするのです」
いろんな人が集まって、自由に言葉を交わし合い、そしてそこから新しいものが生れていく……ピロスマニはそんな場所を提案したのです。
そしてこれこそが、私が新しく始めるこのサイトに託したい夢なのです。

大きな木の家には、不思議な力がある……まさしく「大きな木の家」である築百年の古民家に住んでいる私は、折にふれてそう感じます。
「ここでは時間がゆっくり流れているみたい」
「この空間は心を開放してくれます」
我が家に来られるお客様からそんな言葉を聞くと、たとえ冬はとんでもなく寒くても、掃除に時間がかかっても、この場所は大事に守っていきたい、そう思います。

今から始める電子冊子が、木の家の持つ温もりと開放感を感じさせるものになってほしい。そして、そこにたくさんの人が訪ねてくださって、新しい世界が広がっていってほしい。

「ふえと大きな木の家」。
どうぞよろしくお願いいたします。

 

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