――大人が読む少年少女世界文学全集について
狩野香苗
2009年新春号の「遊」Vol.42から最終号のVol.100まで、「本の森だより」のタイトルで、ブックガイドを書かせていただいた、フリー編集者の狩野香苗です。
今回、digital「遊」にも引き続き書かせていただくことになりました。テーマはやっぱり本です。私の人生を支え、彩を与えてくれた本ですが、その原点を少年少女文学全集から探ってみようと思うのです。
このテーマは、「遊」最終号の直前となるVol.99で取り上げた、松村由利子著『少年少女のための文学全集があったころ』(2016年、人文書院)を読んだことがきっかけでした。
私が少女時代を過ごした20世紀の半ばには、少年少女のための文学全集が各出版社から競って刊行されていました。『ギリシャ神話』から始まり、『宝島』『若草物語』『ああ無情』『クオレ』『平家物語』『西遊記』など、古今東西の名作を夢中になって読んだものです。
ところが、半世紀後の今、この手の全集はほとんど見かけることがなくなってしまいました。表紙絵もすっかり色あせ、子どもたちに読まれることもなく、全集本は図書館の片隅にひっそり置かれています。
松村さんは「子ども時代の全集物は膨大な書物の海に漕ぎ出すための大まかな海図のようなものであり、その海へ自ら漕ぎ出す情熱こそ大切なもの」と書いています。
「今、ここ」でない世界に遊ぶ時間は、現実世界を生き抜く力になるという松村さんの言葉が、私の胸に響きました。私の人生の支えとなってくれた全集本への愛に、私の胸はあふれんばかりになったわけです……が、よくよく考えてみたら、あんなに面白かった物語の数々なのに、熱心に読みふけったはずなのに、あらすじさえすっかり忘れている本もあるんです!
なんてこと!!
まぁ、半世紀もたてば、忘れてしまって当然かも。
そこで、よし、読み直そうというわけです。今は書棚にあった古い少年少女世界文学全集の目録を見ながら、どれから読もうかと、本選びからして楽しみでなりません。
しかも、今回はふえさん繋がりのご縁で知り合い、意気投合した貼り絵作家の吉水法子さんが、素敵なイラストを描いてくださることになりました。
吉水さんが豊かな感性と鮮やかな色彩で描く貼り絵をカラーで見ることができる、電子版「遊」ならではのコラボレーションです。
どうぞ、ご期待ください!
あっ、ふえ編集長、締め切り日は守ろうと心新たに誓いました。
きっと守る……ハズ。