ベルヌ『十五少年漂流記』によせて
吉水法子
実は私はこの世界一有名な冒険小説を読んだことがなかったのです。
特に理由はないのですが、子どもの頃から少年が主人公の小説にはあまり興味を持ってこなかったかもしれません。
「今回は『十五少年漂流記』を取り上げようと思います」という狩野さんの提案がなかったらついに読まないまま一生を終えたかもしれないと思うと、人はいつ、どんなきっかけで本に出会うか、「本」との不思議な縁を感じました。
おもしろくて一気に読みました。魅力的なエピソードが次から次へと展開されるのですが、描きたいと思ったのは十五人の少年たちの、生き抜くことに対して何も諦めない、どんな困難にも立ち向かったエネルギーでした。少年一人一人を忠実に描くことよりも、彼らの好奇心や勇気をスケール感ある表現で描きたいと思いました。短い少年時代の2年間という貴重な時間のなかで、大きく成長していった少年たちの未来を想像していただける絵に仕上がったでしょうか。