片山通夫
京都市の西北のはずれ、嵯峨野にひっそりとたたずむ祇王寺に行った。
最近ますますオーバーツーリズムに悩む京都。今年それに拍車をかけているのが、大河ドラマ『光る君へ』だ。紫式部や『源氏物語』にゆかりのある史跡に どっと人が押し寄せている。
その『源氏物語』ブームに背を向けて、今回は『平家物語』ゆかりの「祇王寺」を訪れた。
祇王寺は明治時代に一時廃寺となったが、大覚寺の門跡がこれを惜しみ、現在では大覚寺の塔頭として存在している。
かくて春過ぎ夏たけぬ。秋の初風吹きぬれば、星あひの空をながめつつ、天(あま)のとわたる梶の葉に、思ふ事書くころなれや……(平家物語)
夏の暑さにも負けず、苔が美しい。
夕日のかげの西の山のはにかくるるを見ても、「日の入り給ふ所は、西方浄土にてあんなり。いつかわれらもかしこに生れて、物を思はですぐさむずらん」と、かかるにつけても過ぎしかたのうき事共、思ひつづけて唯つきせぬ物は涙なり。たそかれ時も過ぎぬれば、竹の編戸を閉ぢふさぎ、灯かすかにかきたてて、親子三人念仏してゐたる処に、竹の編戸をほとほととうちたたく者出で来たり……(中略)……「相構へて念仏怠り給ふな」と互ひに心を戒めて、手に手を取り組み、竹の網戸を開けたれば、魔縁にてはなかりけり。仏御前ぞ出で来たる……(平家物語)
左側が、祇王・祇女と母・刀自の墓、右にあるのは、清盛供養塔。
なお、仏午前の墓は、彼女の故郷、小松市の原町にあるという。