チェーホフの言葉 第2回

「つとめを果たす(2)―『僧正』」
渡辺聡子

 題名
「僧正」は、仏教の高僧を表わす言葉ですが、ロシア語の原題は «Архиерей» (アルヒエレイ)、正教の位階最高位に位置する主教職をさし、主人公の副主教ピョートル(修道名)もその一員です。1902年、チェーホフの死の2年前に書かれたこの作品は、主人公が復活祭を目前にして亡くなるまでの1週間をたどりますが、作者の自伝的要素を影のように織り込みつつ、人生と死を、永続的な時間や大きな世界において見た作品でもあります。
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チェーホフの言葉 第1回

チェーホフの連載を始めるにあたって

渡辺聡子

この度、ふえさんの大きな木の家に招んでいただき、嬉しく思っています。
私は長年チェーホフを愛読してきましたが、歳を重ねることや、何かの体験をきっかけに、あらためてチェーホフの作品や生き方の奥深さを知ることがあります。そのことをここでお話しできたらと思っています。初回は長くなってしまいましたが、どうぞよろしくお付き合いください。  “チェーホフの言葉 第1回” の続きを読む