みみずのたわごと 

濱口 十四郎

子供の頃の私にとっては、水屋の上に置いてあるラジオがなによりの娯楽だった。遊び疲れて帰ってくると流行り歌がながれていて、夕飯の支度をしながら母がそれに合わせて、素っ頓狂な声を張り上げている。私は逃げるように戸外の風呂場に飛び込んで、『母のブギウギ』をやりすごす。そして囲炉裏を囲んでの食事になると、ラジオから先ほどまでの流行り歌を諭すように「トクトミロカ サク『ミミズノ タワゴト』・・・」と、落ち着いた声(いま思うと徳川夢声か・・・)が聞こえて来た。

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