もうひとつの故郷フローレス 参の巻

命がけのホスピタリティ
青木恵理子

2023年に新型コロナウイルス流行による海外渡航の制限がなくなり、夫と私は再びフローレス島の「家族」たちのもとを訪れるようになった。私たちが取得するのは、観光や親せき訪問のためのヴィザ(滞在許可)。滞在できるのは最長30日間。これを最大限生かして、私たちは、2023年は10月初めから11月初めまで、そして今年2024年は7月末から8月末まで、その大部分の期間をフローレス島の家族とともに暮らした。そしていつものように、フローレスへの行きかえりには、国際観光地バリ島で2,3日のリゾート気分を味わった。 “もうひとつの故郷フローレス 参の巻” の続きを読む

もうひとつの故郷フローレス 弐の巻

フローレス版『雨の慕情』

青木恵理子

インドネシア東南部にあるフローレス島。わたしは、そこに1979年から1984年の間に述べ三年間くらした。その後、子育て期間と新型コロナウイルスの世界的な感染拡大期を除き、毎年一カ月弱をそこで過ごしてきた。 “もうひとつの故郷フローレス 弐の巻” の続きを読む

もうひとつの故郷フローレス 壱の巻

八代亜紀哀悼
青木恵理子

1979年8月、わたしは、フローレス島にはじめて降り立った。フローレスは、インドネシア南東部にある、四国より少し小さい島である。同行者は、1978年に学生結婚した夫。ともに文化人類学研究者の卵。すくなくとも何かの卵だった。双方の両親の意向に便乗して結婚式と披露宴はそれなりに豪華だったが、新婚旅行はなし。アルバイトと奨学金暮らしという経済的理由も多少あるが、「愛のくらしに、新婚旅行は必要ないわ」という、理想に燃えた――鼻息荒い――「卵」特有の理由もあった。1979年から約2年に渡るフローレス島でのフィールドワークは、文化人類学研究者をめざす卵たちにふさわしい、ながーい新婚旅行でもあった。

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