バーネット作『秘密の花園』

大人が読む少年少女世界文学全集 第4
狩野香苗

◆まったく読んでいないのに、読んだ気になっている本
いままでここで取り上げた3冊の本には、それぞれ自分なりのこだわりがある本だった。
飛ぶ教室』は夢中で読んだのに60年たって内容をすっかり忘れてしまった本『十五少年漂流記』は読書の喜びに目覚めて何度も繰り返し読んだ本
あしながおじさん』は本より舞台の印象ばかり残っている本
いずれも抄訳でなく完訳をしっかり読んだし、子ども心に大きな印象と影響を与えてくれた、忘れられない本だった。

ところが、今回のバーネッ(Frances Eliza Hodgson Burnett, 1849年1924年)作『秘密の花園The Secret Garden)』は、まったく読んだことがないのに、すっかり読んだ気になっているという、ちょっと問題のある本なのだ。
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『あしながおじさん』

大人が読む少年少女文学全集 第3巻
狩野 香苗
読んでから見るか、見てから読むか――そんなコピーが大流行したのは、今から半世紀も昔のことだ。ベストセラー小説が舞台化されたり、映画の原作がベストセラーになったりと、出版と映画や演劇が互いに刺激を与えながらブームを作るという手法は昔からある。
アメリカの女性作家ジーン・ウェブスター(Jean Webster、1876-1916)が1912年に発表した児童文学『あしながおじさん(Daddy-Long-Legs)』は、今も読み継がれているが、同時に映画やアニメ、舞台などの視覚化も盛んで、「読んでから見るか、見てから読むか」と、悩んだ人も多いのではないだろうか? “『あしながおじさん』” の続きを読む

J・ベルヌ作『十五少年漂流記』

大人が読む少年少女世界文学全集 第2巻 

 狩野 香苗

子ども時代に読んだ児童文学を、半世紀を経て大人が読み直すというこのシリーズ。第1巻の『飛ぶ教室』が内容をまったく忘れた名作であったのに比べ、第2巻は何回も何回も読み続け、内容はもちろんのこと、当時の読後の胸の高鳴りまで今も鮮明に覚えている、私の読書体験の原点ともいうべき『十五少年漂流記』だ。 “J・ベルヌ作『十五少年漂流記』” の続きを読む

大人が読む少年少女世界文学全集 第1巻 ケストナー作『飛ぶ教室』  

狩野 香苗

現在68歳の私は、子どもの時から大の本好き。手当たり次第に本を読み漁り、大きくなったら本を作る人になると決意していた。その夢を実現させるには、かなりの遠回りを要したのだが、雑誌編集者を経て40代で書籍編集者となった。本を読み、本を作り、また本を読みの60年。よく飽きもせず本と付き合ってきたものだ。この読書の旅もそろそろ終わりが見えてきた。集中力がなくなり、老眼鏡が必要となり、本も紙から電子出版という時代になってきた。そんな今、自分の読書体験の原点であり、子ども時代に耽溺した少年少女文学全集を読み直してみたくなった。

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本の森からこんにちは!

――大人が読む少年少女世界文学全集について
狩野香苗

2009年新春号の「遊」Vol.42から最終号のVol.100まで、「本の森だより」のタイトルで、ブックガイドを書かせていただいた、フリー編集者の狩野香苗です。

今回、digital「遊」にも引き続き書かせていただくことになりました。テーマはやっぱり本です。私の人生を支え、彩を与えてくれた本ですが、その原点を少年少女文学全集から探ってみようと思うのです。

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