ヤクートでの新学期

ミルチャ アントン
原文のロシア語は、訳文のあとにあります。

9月になった。
これはロシアでは、秋の訪れだけではなく、新しい学年の始まりを意味する。そう、ロシアの子どもたちの新年度が始まるのは、ソビエト時代から、日本とは違って桜の咲く春ではない。枯れ葉が地面に散り落ちて、それを高みから見た空がやれやれ嘆かわしいことだわいとでも言うように顔をしかめる、そんな季節なのだ。楽しくて晴れやかな夏が終わり、ロシアの多くの地域では冷え込む日も出てくる。この時期に多くの子どもたちが「学校に行きたくない症候群」のようなものにかかるのは、そのためかも知れない。 “ヤクートでの新学期” の続きを読む

3)三上山の大ムカデ(百足)退治伝説

桑山 ひろ子
~生まれ育った滋賀県や、現在住んでいる岡山県の伝承を訪ねてみました~

故郷を離れて半世紀以上経つというのに、いまだに「滋賀」「近江」と目にしたり耳にすると、「お!」と立ち止まってしまう。
本稿の1回目で、総社市無形民俗文化財60編の中の「草津の姥餅」を紹介したが、またまた「近江」を発見した! “3)三上山の大ムカデ(百足)退治伝説” の続きを読む

「ユーラシア放浪」3

ポーランドでの1週間
畔上 明

1989年11月10日ベルリンの壁崩壊のニュースは、私にとって人生の大きな転機となりました。
当時の私は、1970年代から80年代にかけてソ連との貿易、旅行、流通にかかわる仕事のことごとくで挫折を味わい、20代から30代にかけて七つもの職を転々としていたのですが、ベルリンの壁崩壊の後まもなく、北欧の現地ツアー手配会社「ツムラーレ」から誘いを受けたのです。39歳、不惑を迎える直前のことでした。 “「ユーラシア放浪」3” の続きを読む

「ウクライナの芸術家たちは今……」

片山ふえ

ウクライナ侵攻が始まって2年がたった今年の2月、私はあるビデオを発信しました。題して「ウクライナの芸術家たちは今……」
https://youtu.be/jtLJdGYgLg4
もうご覧くださった方、ありがとうございます。
まだの方は、ぜひここでご覧ください。今回はこのビデオにまつわる話を……。 “「ウクライナの芸術家たちは今……」” の続きを読む

もうひとつの故郷フローレス 弐の巻

フローレス版『雨の慕情』

青木恵理子

インドネシア東南部にあるフローレス島。わたしは、そこに1979年から1984年の間に述べ三年間くらした。その後、子育て期間と新型コロナウイルスの世界的な感染拡大期を除き、毎年一カ月弱をそこで過ごしてきた。 “もうひとつの故郷フローレス 弐の巻” の続きを読む

ケーキの想い出いろいろ

ミルチャ アントン

ロシア語の原文は日本語訳の後にあります。

今年もいよいよ夏がやって来た。また暑くなるから、それに備える心構えを始めた。必要なのは、体調をととのえて、ついでに何キロか減らすこと。そう、ダイエットをするんだ。
そして、いつものことだが、明日からランニングを始めてカロリー制限もしようと決心すると、そんなときに限って、寝る前に美味しそうなケーキがいろいろ頭に浮かんでくる! “ケーキの想い出いろいろ” の続きを読む

2)桃太郎伝説

桑山ひろ子
~生まれ育った滋賀県や、現在住んでいる岡山県の伝承を訪ねてみました~

「むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。」と聞くと、なんの話をおもいうかべるだろう。
ほとんどの人が、そらで「ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯にでかけました。おばあさんが川で洗濯をしていると、向こうのほうから大きな桃が~」と続けていけるのではないだろうか。その話をしてくれた人の声や部屋の中の明暗、においなどを思い出しながら。
今、機械や機械音に囲まれ、ほとんど声を発しなくても生活が完結する世の中だからこそ、子どもたちにこのような口承文芸を残してやりたいと思う。 “2)桃太郎伝説” の続きを読む

「ユーラシア放浪」2

シベリア鉄道での出会い  
             
畔上 明

格安航空券という渡航手段が出回る以前の1970年代、ヨーロッパに向かう若者たちにとってはナホトカ航路で大陸に渡りその先ソ連国内を通過するというのは一般的な旅行ルートでした。
横浜港からの2泊3日の航海を共にした300名の船客の大半は、ソ連国内の航空運賃が安価なことからハバーロフスクからモスクワ迄は空路を利用します。しかし、ほぼ同じ料金であっても8,500キロの大地を一週間かけてじっくり這うように移動したいと望む十数人がシベリア鉄道の客となるのでした。 “「ユーラシア放浪」2” の続きを読む