J・ベルヌ作『十五少年漂流記』

大人が読む少年少女世界文学全集 第2巻 

 狩野 香苗

子ども時代に読んだ児童文学を、半世紀を経て大人が読み直すというこのシリーズ。第1巻の『飛ぶ教室』が内容をまったく忘れた名作であったのに比べ、第2巻は何回も何回も読み続け、内容はもちろんのこと、当時の読後の胸の高鳴りまで今も鮮明に覚えている、私の読書体験の原点ともいうべき『十五少年漂流記』だ。 “J・ベルヌ作『十五少年漂流記』” の続きを読む

納骨奇譚(「We Love 遊34号」より)

                    片山ふえ

これは2007年の秋に季刊冊子「We Love 遊」に書いたものです。
そのころ「千の風になって」の歌がブームになっていましたが、私たち姉妹は「あれはパパの歌ね!」と話したものです。父が千の風になった話、聞いてください。

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ユダヤ人画家シャガールの面白さに惹かれて 3

『7本指の自画像』(1912)
『ロシア、ロバ、その他のものたちへ』(1912)
(季刊冊子「We Love 遊」89号~91号掲載)

今回はシャガールの作品の中でも最も多くの意味が描き込まれている『7本指の自画像』(1912)を読み解いて行こうと思います。

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シャガールの自伝「私の人生」新翻訳の試み

シャガールの自伝「私の人生」はすでに邦訳が2点ありますが、実はこれらの訳には不明瞭な点がいろいろあります。「We Love 遊」誌上でシャガールの画の画期的な解釈を披露して大きな反響を呼んだ角伸明氏は、従来の不明瞭な点を明らかにするために、今「私の人生」を新たに翻訳中です。なぜ、新しい翻訳が必要なのか――角さんの説明をお聞きください。  (片山ふえ)

尚、「We Love 遊」の記事の一部を、「リバイバル」の項に載せていますので、そちらもぜひご覧ください。

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ユーラシア放浪 リトアニア’76

畔上 明

若き日の揺れ動く心をかかえて横浜を出たのは1976年3月26日のこと。9ヶ月の長きにわたった私の放浪の旅の始まりでした。ナホトカ航路からシベリア鉄道の道中では日本人旅行者との出会いと別れがありましたが、モスクワから先はいよいよ日本人一人旅です。

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みみずのたわごと 

濱口 十四郎

子供の頃の私にとっては、水屋の上に置いてあるラジオがなによりの娯楽だった。遊び疲れて帰ってくると流行り歌がながれていて、夕飯の支度をしながら母がそれに合わせて、素っ頓狂な声を張り上げている。私は逃げるように戸外の風呂場に飛び込んで、『母のブギウギ』をやりすごす。そして囲炉裏を囲んでの食事になると、ラジオから先ほどまでの流行り歌を諭すように「トクトミロカ サク『ミミズノ タワゴト』・・・」と、落ち着いた声(いま思うと徳川夢声か・・・)が聞こえて来た。

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もうひとつの故郷フローレス 壱の巻

八代亜紀哀悼
青木恵理子

1979年8月、わたしは、フローレス島にはじめて降り立った。フローレスは、インドネシア南東部にある、四国より少し小さい島である。同行者は、1978年に学生結婚した夫。ともに文化人類学研究者の卵。すくなくとも何かの卵だった。双方の両親の意向に便乗して結婚式と披露宴はそれなりに豪華だったが、新婚旅行はなし。アルバイトと奨学金暮らしという経済的理由も多少あるが、「愛のくらしに、新婚旅行は必要ないわ」という、理想に燃えた――鼻息荒い――「卵」特有の理由もあった。1979年から約2年に渡るフローレス島でのフィールドワークは、文化人類学研究者をめざす卵たちにふさわしい、ながーい新婚旅行でもあった。

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ロシアのお正月

~お正月に思うこと~
ミルチャ アントン

(ロシア語の原文は、日本語の後にあります)

ときどきロシアの友人たちから、「日本にもあったらいいのに、と思うものって、なに?」と聞かれる。そりゃ、ビーツの料理とか、サバの燻製とか、お母さんのボルシチとかもそうだけど、お正月を迎えるのにこれがないとさびしいなぁ!と思うものがある。それは、ロシアの正月のお祭り気分だ。

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