桑山ひろ子
あけまして おめでとうございます。
今年は、再生や永遠を表す、と言われている蛇年ですね!
わたしは、昨年ついに後期高齢者の仲間入り。これを機会に、古い皮を脱ぎ捨て、新しい「わたし」で前進しようと思います。
さて、年の初めは「干支」の話からいきましょう。
日本でよく語られる十二支の動物の順番が決まるお話です。
挿絵は、今年生誕百年をむかえてモスクワのトレチャコフ美術館で記念展が開かれるロシアの画家マイ・ミトゥーリチさんの絵で、片山への年賀状に描かれていた動物たちです。(編集部)
むかし、むかし、大昔のこと。
神様はとても困っておったんじゃ。なぜかというと、動物たちに仕事を頼んでも、すぐにケンカを始めてちっとも仕事をせんのでな。
それで、ある年の暮れ、神様は動物たちを集めて、こう言うた。
「一月一日、元日の朝、わたしのところに新年のあいさつに来なさい。一番早く来たものから順番に一年ずつ、その年の大将にしてあげよう」
それを聞いた動物たちは
「おいらが一番になる!」
「いや、おいらだ!」と大騒ぎ。
動物たちの声で、昼寝をしていた猫が目を覚ましてな、「みんな、なんでこんなに騒いでるんかな」と、隣にいたネズミにたずねた。
するとネズミは 、「元日の次の日、一月二日の朝に、神様のところに挨拶に行けば、動物の大将になれるんだって」と教えたんじゃ。ずる賢いネズミは、競争相手を少しでも減らそうと、猫にうそをついたんじゃな。
そして、大晦日がやってきた。
辺りが暗くなり始めたころ、牛が「おいらは歩くのが遅いから、一足早く出かけることにしよう」と言って、支度を始めた。
牛小屋の天井でそれを見ていたネズミは、こっそり牛の背中に飛び乗った。
そうとは知らぬ牛は、のそのそと歩き続けて、夜明け前に神様の門の前に着くことができた。
そこへ、朝日が姿を現し、一月一日元日の朝がやってきた。
そのころ、鶏は早く出発したいものの、「神様からいただいた大切な仕事をやらないわけにはいかない」と夜明けを待ち、いつもより大きな声で朝が来たことを告げ終わると、急いで出発した。
鶏の声を聞いて神様が門を開けたとたん、牛の背中に乗っていたネズミがピョンと飛び降りて、「神様、あけましておめでとうございます」と挨拶したもんじゃから、神様はニコニコして、ネズミに一番の札をわたした。それで、牛は二番目になってしもうた。
鶏の鳴き声を聞いて、大将になりたい動物たちは、支度を整えると急いで出発した。
虎は、動物たちの集まりの場にいなかったが、噂をきいて、「みなに頼りにされている自分が大将から外れるわけにはいかんだろう」と、千里の道を駆け抜ける速さで走り、三番目に門をくぐった。
四番目は、他の動物たちが休憩している間もピョンピョン跳ねながら進んだウサギじゃった。
龍と蛇は、いっしょに門の前に到着したんじゃが、蛇は龍を尊敬していたので、龍に五番目をゆずり、自分はそのあとをニョロニョロとはいって六番目になった。
足が速いのに道草ばかりしていた馬は七番目、途中で道に迷った羊は八番目に門をくぐった。
そのころ、仲良く一緒に走っていた犬と猿は、お互いの負けず嫌いのせいで、取っ組み合いのケンカを始めてしもうた。
そこに通りかかったのが鶏で、「ケンカなんかしている場合じゃないぞ」と仲裁に入って、まず猿を先に行かせ、自分が間に入り、次に犬を行かせたから、九番目は猿、十番目が鶏、十一番目は犬ということになった。そして、最後の十二番目に門をくぐったのは猪じゃった。
実は、イタチが早くから来ていたのじゃが、「おいらは十二番目でいいや」と、後から来た動物に順位を譲っておった。それで、いよいよ十二番目に門をくぐろうとしたとき、猪突猛進でつっこんできた猪に一瞬の差で抜かれてしもうたんじゃな。それを見た神様は、イタチをかわいそうに思うて、毎月の一番初めの日に名前を残してやろうと考えて、一日を「ついたち」と呼ぶことにしたんじゃと。
カエルがやってきたのは十四番目じゃったから、がっかりして「もうカエル」と言って帰っていった。
さて、神様と十二支たちの酒盛りが始まったが、そこへネズミにだまされたと知った猫が飛び込んできて、ネズミを追い掛け回した。それで今でも猫はネズミを見ると追い掛け回すんじゃ。犬と猿もいまだに「犬猿の仲」ということじゃ。
むかしこっぷり。
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この十二支、現在、世界で15か国が使っているとのこと。その中にはロシアやアラビアなども入っているそうです。
十二支は、中国の殷(いん)(紀元前1600年頃―紀元前12‐11世紀)の時代の王充(おういつ)という人が作った数え方で、12年で天を一周する木星の軌道上の位置を示すための数詞だとか。正式な名称は、子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥(シ・チュウ・イン・ボウ・シン・シ・ゴ・ミ・シン・ユウ・ジュツ・ガイ)で、これでは難しすぎて覚えにくいということで、人々がなじみやすい動物に置き換えたのが、その始まりだそうです。
ただ、12の動物は、中国から伝わっていくうちに、その国に親しまれている動物に少しずつとってかわられ、ネコや水牛、ヤギ、カメ、ワニ、ゾウ、面白いところでは、ハチやカタツムリもいるそうです。
中国の十二支のブタは、日本ではイノシシ。中国から日本に十二支が伝わったのは6世紀ごろ、一般に広まったのは江戸時代で、そのときブタは一部の人に知られているだけで、一般の人々は見たことも聞いたこともなかったとのこと。それで日本ではブタはイノシシになっているのだということです。
ベトナムでは、牛が水牛に、羊がヤギに、ウサギがネコになっています。水牛やヤギはわかるとして、なぜウサギがネコになっているのでしょう。ネコはネズミにだまされて、間に合わなかったはずでは? ウサギ年の「卯」の中国語の発音(mao)が、ベトナム語のネコ(meo)に近いからという説もありますが、ベトナムの民話では、ネズミにだまされたネコをかわいそうに思った月の天女が、心やさしいウサギに月で不老不死の薬を作るという役割を与え、順番をネコに譲らせたということになっています。なるほど!
こうなると、ほかの国でも、動物たちがどのような経緯で十二支に入ることになったのか、全部知りたくなってきますね!
ご存知の方がいらっしゃったら、ぜひお教えください。